DECLAN MCKENNA

「デクラン・マッケンナはジェネレーションZの社会的・音楽的良心」(i-D)、「マッケンナは何かスペシャルなものへと向かっている」(NME)、「これほどの世才に長けた17歳には何かしら苛立ちを感じさせられる」(Q Magazine)、「17歳でこれだけ素晴らしいマッケンナが、将来どうなっているかは神のみぞ知る」(サンデー・タイムズ紙)、「彼は素晴らしい。ジェイミー・Tにジェイク・バグをほんの少し足した感じ・・・初期のべックをほんの少しとも言えるかも知れない」(マット・エヴェリット/BBC 6Music)と海外メディアで評される、デクラン・マッケンナは1998年12月24日生まれ、イギリス、ハートフォードシャー出身の現在18歳。8歳でギターを手にし、デヴィッド・ボウイ、ジェフ・バックリー、ザ・ビートルズ、ヴァンパイア・ウィークエンドなどポスト・ミレミアムのインディーバンドに没頭し、15歳までに自宅レコーディングで100曲以上の楽曲をレコーディングしたという。
 2014年夏に書いたシングル“ブラジル(Brazil)”は、FIFA(国際サッカー連盟)の汚職と同年のサッカー・ワールドカップに関してのもので、その年の終わり16歳の誕生日直前に、セルフ・リリースされた。デクラン自身はこの曲に関して「“ゼップ・ブラッター(第8代国際サッカー連盟会長)に関して曲を書くやつなんていない”って言われるんだ。」、「でもこの曲は彼に基づいて、環境を操作する強欲なキャラクターを書いたんだ。僕が初めて本格的にレコーディングした曲で、僕がリリースした最高の曲・・・メールがどっさり届いて炎上したよ」と語っている。
 2015年、グラストンベリー「エマージング・タレント・コンペティション」にエントリー・シートを送り、結果として優勝を果たし、同年グラストンベリー・フェスティバルに出演。計50以上の音楽業界関係者から契約のオファーを受けていた(40名以上のマネージャー、12社以上のレコード会社!!)デクランはメタリカ、ミューズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、フォールズ、ザ・ブラック・キーズ、ポップ・エトセトラのマネジメント、Q Primeに所属し、レーベルはColumbia Recordsと契約。「1つの曲をきっかけに拾われるのはすごく珍しい事だよね、こういう言い方はしたくないけど、とにかく凄くラッキーだったんだと思う」と振り返っている。
 グラストンベリーの後、ギグは濃厚さを増し、さらに大きな音が欲しいと考えデクランは、ギタリスト、ベーシスト、ドラマーを起用した。学校があるときもいつでも曲を書く時間を捻出していたものだったが、9月にAレベル(一般教育終了上級レベル)のカリキュラムが始まって間もなく、彼は学業を放棄することを決意する。GCSE(General Certificate of Secondary Education/一般中等教育修了試験)のテストでは”まあまあ“だった(ちなみにAが4科目、Bが2科目、Cが2科目、Dが2科目だった)デクランだが、「とにかくこれ以上そこにいることに構っている訳にいかなかったんだ」、そして「家に帰ってギターを弾く。ひたすらそれだけがやりたかった」と続けた。
 その後もインターネットで瞬く間に広まった、親に受け入れてもらえなく、プレッシャーに耐えきれず自殺してしまった10代のトランスジェンダーの子(※2014年12月に自ら命を断ったリーラ・アルコーン)についての投稿にインスパイアされた楽曲“パラセタモール(Paracetamol)”を発表。トランスジェンダーやLGBTの友人を多く持つデクランは「多くの人がトランスジェンダーの人を好意的に思っていなかったり、メディアも良く描いていなかったりすることで、トランスジェンダーの人は自分のあり方は良くない、間違っていると感じざるを得ないような圧力があると思う。そういうことを書きたかった。」と語っている。
 また初期に書かれた曲で、学校生活の中で考え方が違うことで対立したり、誰かのあり方を否定するような考え方を持っている人、世の中のニュースでも話題になっている同性愛者の権利問題や、考え方が違うというだけで法的な制約があるという状況にインスパイアされたという“ベツレヘム(Bethlehem)”。「右派のフォックス・ニュース系テレビのプレゼンターが、警察の蛮行や排外主義のようなものを正当化しようとして、後進的な政治的利益のために事例を利用しようとするんだけど、完全に言葉をしくじってしまって、自分でも何も話しているかちゃんと分かっていないって内容なんだ。僕がE.E.カミングス(※アメリカの詩人。1920年代~50年代に活躍)の“むろん神さまの次にだがアメリカよわれ(next to of course god America i)” をポップ・ソングとしてリライトしているのかも知れない」と語る、全米を横断する彼とバンドのツアー生活の熱狂を垣間見せたミュージック・ビデオが話題を呼んだ“イソンバード(Isombard)”といった世界で起きている多岐に渡る問題を提起したシングルを発表してきた。
 英BBCが毎年発表している、その年ブレイクが期待される新人リスト(sound of・・・)の2017年度版、“Sound Of 2017”の候補者の1人にもなった事で、デクランの注目度はさらにあがり、今年に入り“ザ・キッズ・ドント・ワナ・カム・ホーム(The Kids Don’t Wanna Come Home)”を発表。曲のインスピレーションになったのは2015年の間に起こった一連の出来事。11月13日にパリで起こったテロ事件にそれまでに感じたことのない恐怖感ともろさを覚えるまでは作りかけのままだった。朝早くパリを出発しようとしていたデクランは、自身が以前曲の中で表現しようとしたまさにそのことを、自ら思い知ってしまったことに気づいた。ショックと恐怖を経験し、権力者たちが未来にこれほどの不安を生じさせる様子をなすすべもなく眺めている、今日の世界における若者の無力さを。
 この曲は若い世代が自分の事しか考えず、携帯電話にくぎ付けになっているだけという、一般的な先入観に対するデクランの反発である。デクランと友人たちはこれまで以上に政治に関心を持っており、紛争、経済、気候変動(地球温暖化)などを懸念していると主張する。未来を直接左右する事項に、つい最近まで若すぎて投票できなかったことへのフラストレーション。その非常にリアルなフラストレーションにも関わらず、“ザ・キッズ・ドント・ワナ・カム・ホーム”は希望感を生み出し、若者たちが芸術と対話の両方を通じて、変化への前向きな闘いを究極的に望んでいることを感じさせる。
 6人兄弟の末っ子、音楽愛に溢れ、一番好きなアーティストはデヴィッド・ボウイという。この世界で起きている様々な問題について曲にする、デクラン・マッケンナという英国の新しき「世代の声」は、自身ソングライティング、そしてこの夏に発売されるファースト・アルバム『ホワット・ドゥ・ユー・シンク・アバウト・ザ・カー?』に関して、「色んなこと、自分に起きた個人的なこととか、政治のこと、世界で起きていること、ニュースで見ること。なんでも。考えさせられることとか、そういうのを曲にすることが多いね。」、「いかにもといった(ファースト・)アルバムになるよ。色んなアイデアがとっちらかってね。それが悪いこととは思わない。(デヴィッド・)ボウイだってそうだったんだから。僕は1つのジャンルにまとめられないものを作っているんだ。難しいことではあるけど、曲が十分あるのは間違いないからね」と語った。
 また、5月からはUKツアーをスタート、6月には3年連続出演となるグラストンべリー、ヨーロッパで行われるフェスへの出演、8月はロラパルーザ2017、サマーソニック2017、レディング、リーズなど、夏のフェスティバルへの出演を果たす。